/** WEB数式 MathJax 2023.4.20 M.Tanaka**/ 同期する世界

2023年4月24日月曜日

同期する世界 第3章 生理現象と同期

集団リズムとしての心拍(p.120)

無数のミクロリズムの協調から一つのマクロリズムが生み出される一例として心臓の拍動がある。右心房の上部に洞結節と呼ばれる部分があり、ここに約一万個のペースメーカー細胞を含む集団がある。個々のペースメーカー細胞は自律的に収縮を繰り返しているが、細胞ごとに収縮のペースはばらついている。しかし、二つの細胞が接触するとペースを揃えて収縮するようになり、全体が一塊になると単一の強いリズムが生まれる。


揺らぐ心拍(p.124)

心拍はそれほど規則的なリズムではなく、安静にしていても揺らいでいる。これは、心臓が自律神経の強い影響を受けているから。自律神経には交感神経と副交感神経があり、前者はノルアドレナリンという神経伝達物質を放出して心拍数を上げ、後者はアセチルコリンを放出することで心拍数を抑える。このように、肉体運動や精神状態を素早くキャッチして、状況に応じて心拍数を変える機能が備わっている。

興奮現象とは何か(p.125)

心臓の細胞には、少し刺激されただけで一過的に強く応答する性質があり、この強い応答を「興奮」と呼ぶ。
興奮現象は振動現象と密接な関係があり、条件が少し変わるだけで興奮が繰り返しの興奮、つまり周期的変動になる。興奮現象は、細胞膜とそれを取り巻く環境の電気化学的性質に由来する。
細胞は細胞膜をはさんで内と外との間には電位差(外部の電位を基準にして測った内部の電位を「膜電位」と呼ぶ)があり、膜の外側はプラスの電気を帯び、内側はマイナスの電気を帯びている。
膜の内外で電気の帯び方が違うのは、電気を帯びた原子であるイオン(ナトリウムイオンNa+とカリウムイオンK+が重要な役割を果たす)の濃度が膜の内と外では異なる(Na+は外側の方が、K+は内側の方が濃度が高いが、Na+の濃度差の方が大きいため、外部の電位が高くなる)からである。
膜電位が一定の状態で安定している場合、その膜電位を「静止電位」と呼ぶが、他の細胞などから電気的に一突きされると、膜電位に一過的な大変動が生じる。
膜電位が大きく変化するのは、イオンが膜を通して大量に出入りするからである。外部から電気的刺激を受けて膜電位が少し上がると、ナトリウムイオンNa+は濃度が高い細胞外から濃度が低い細胞内に流れ込み、膜電位がさらに上がり、Na+がますます流入し膜電位はさらに上昇する。

やがて、Na+の膜内外の濃度差が小さくなると、このイオンを細胞内に流入させようという力が弱まり、ついで、K+が膜を通して流出し始める(細胞内の方が濃度が高いため)。膜電位が上昇するとNa+と同様にK+も膜を透過しやすくなるが、Na+よりも時間がかかるのでこのような現象になる。こうして、K+が流出することで膜電位が急激に下がり始める(図24)。
膜が興奮すると図24に示すような鋭いピークを持つ電位パターンが現れ、これを活動電位と呼ぶ。細胞の活動電位の持続時間は1ミリ秒にも満たない短時間であるが、心筋の興奮では活動電位は数百ミリ秒も持続する。これは、Na+やK+以外にCa2+が興奮過程に関与するためである。

振動と興奮の親近性(p.131)

興奮を一回限りではなく何度も繰り返すようになった細胞が、ペースメーカー細胞で、これは細胞が振動子として振舞うことを意味している。細胞の性質や環境を少し変えるだけで、振動子になったり、単に一過的な興奮のみを示す基本単位になる。
この性質を位相モデルで表現するには、粒子の円運動は等速度ではなく、ある狭いゾーン(「魔のゾーン」)を通過するとき、はなはだ減速するというモデルを考える(図25)。


減速され過ぎて、このゾーンの手前で止ってしまうのが図25(b)で、この場合、細胞は一過的な興奮を示すのみとなる。一方、図25(a)は、ゾーンの手前で減速されても、ゾーンを通過するだけの速度(これは図24において、静止電位よりも上部にあるしきい値に相当する)が保たれている場合、あるいは手前で停止した場合でも、電気的刺激でポンとひと押しされて、膜電位がしきい値を超えた場合は、粒子は回転を続け、この場合は細胞は振動子となる。

心臓の異常(p.133)

心臓の細胞の内、ごく一部は発振機能を持つペースメーカー細胞で、残りの大多数は自力ではリズムを示せない興奮性細胞であるが、正常な心臓では、ペースメーカー細胞群が送り出すリズムが刺激となって、興奮性細胞もそれと同じリズムで活動するため、心臓が全体として同期する。
しかし、何らかのきっかけで、興奮波が心室のある小部分のまわりを、ペースメーカーからやってくるリズムよりも高い周波数でぐるぐる渦巻きはじめることがあり、心室がこの独自の速いリズムで収縮し、頻脈の症状として現れる1)(下図参照)。


そのままだと命に別状はないが、渦巻き波が引き金になって次々に新しい波が生み出され、心室が全体として時間的にも空間的にも大きく乱れたカオス状態に陥ると、心室細動と呼ばれる状態に移行する危険性がある。そうなると、血液のポンプとしての心臓の機能は失われ、そのままだと短時間のうちに死に至る。

興奮性の場に生じる様々なパターンやその動きについては、1970年代から物理学者や化学者の興味を大いに惹き、この方面の研究は、実験も理論もずいぶん進んでおり、その一例として、ベルーゾフ・ジャボチンスキー反応という化学反応がある2-3)(下図)。
この化学反応は、一見、心筋組織で起こる興奮現象とは無関係に思えるが、ベルーゾフ・ジャボチンスキー反応に参加している化学物質の濃度がどのように時間変化するかを支配する運動方程式が、膜電位の興奮現象を記述する運動方程式ときわめてよく似ているため、多くの研究者が、生体の興奮現象との関連性を意識しながらこの反応の研究を行っている。

Reference


2023年4月12日水曜日

同期する世界 第2章 集団同期

ミレニアム・ブリッジの騒動(p.70)

つり橋を渡る歩行者たちの足並みがひとりでに揃い、ロンドンのテムズ川に架かるミレニアム・ブリッジが大きく横揺れして大変な騒ぎになった1)

歩行の同期はなぜ起きたか(p.73)

ばらばらなはずの人々の歩行がひとりでに揃って大きな力を生んだメカニズムが問題-リズムの集合体が一つの大きなリズムとしてふるまう可能性。このような現象は、プレニアム・ブリッジよりも以前に日本でも起きていた2)

同期現象の面白さは、モノを選ばず、リズミックにふるまうものなら何にでも出現するということにある。

ひとりでに揃う拍手(p.76)

拍手も歩行と同様の繰り返しの動作で、拍子を合わせるつもりでないのに。コンサートホールで聴衆の拍手がひとりでに揃うという現象がある3)

静かな環境の下での一個人の拍手には、遅いモード(1秒間に2回で、バラツキの幅は周期の平均値に比べて小さい)と速いモード(1秒間に4回で、規則性は遅いモードに劣り、バラツキが大きい)がある。

自然周期のバラツキが小さければ振動子は互いに同期しやすく、大きければ同期しにくいので、遅いモードでは聴衆の拍手が同期すると期待できる。実際のコンサートホールでのでデータでは、最初はまばらだった拍手が10秒間ほど続いた後、次第に揃った拍手が10秒~20秒続く(遅いモード)とまた乱れてくる(速いモード)。このように同期と非同期が繰り返される現象が報告されている(参考論文へ)。

ホタルの見事な光のコーラス(p.80)

ホタルの発光は、仲間と交信するシグナル。明滅しているホタルは一つの振動子とみることができ、ホタルの大集団は明滅を同期させ、一つの巨大な光のリズムと化す。

バックが目撃したもの(p.82)

ホタルの発光の研究の第一人者である米国の動物学者ジョン・バックがタイのチャオプラヤー川でオスのアジアボタルが互いに発行のタイミングを調整し合うことで見事なユニゾンを達成しているのを見た4)

アジアボタルの集団は0.56秒間隔(誤差±0.006秒)で発光を繰り返し、1回の発光は数十分の1秒くらいしか持続しない。

ホタルは何のために同期するのか(p.86)

米国のグレート・スモーキー山脈国立公園のホタルは、二種類の基本的リズムからなる複合的なリズムで発光する。すなわち、0.5秒間隔のフラッシュを6回で3秒間続いた後、7秒間沈黙するというパターンを繰り返す。このように、0.5秒という短い周期と10秒の長い周期を含む複合的なリズムで発光し、集団を形成すると、長い周期と短い周期の両方で同期する。

米国コネティカット大学のアンドリュー・モイセフとジョージア南大学のジョナサン・コープランドは、一匹のメスボタルを本物のオスボタルの発光パターンにそっくりの光を出す8個のLED発光体で取り囲み、メスボタルの反応を観測する実験を行った5)。その結果、メスは疑似的オスボタルたちが同期して発光する場合に限ってそれに応答し、同期がほんの少し乱れてもそれに敏感に反応して応答の度合いは低下し、ばらばらの発光に対してはほとんど関心を示さないということが観測された。つまり、メスは、何故かは不明だが、個々のオスボタルではなく集団全体としての発光パターンを認識している。

モノの違いを超えるリズムと同期(p.89)

リズムを担っているモノとして、それが何であるかに関して自然はいたって無頓着で、リズム(ミクロリズム)が多数寄り集まりさえすれば、自然はそれを一つの大きなリズム(マクロリズム)にまとめ上げようとする。

集団リズムを幾何学的にイメージする(p.90)

円周上を走り回る粒子たちによってリズムと同期を記述するやり方を位相モデルと呼ぶ。円周上を走る二個の粒子が互いに影響を及ぼし合う場合は、相手を一定範囲内に引きとめ、一体となって回転する。これが位相モデルによる同期の基本的イメージである。そして、リズムの大集団を表すには、単に円周上を回転する粒子の数を増やすだけである。その場合、すべての粒子が一点に集中することはないが、互いに引き合う力のおかげで相互の位置関係を保ったまま一体となって回転することになる。

集団リズムが存在するか否かについては、粒子の分布が全くランダムで円周上にほぼ一様に広がっているなら、集団全体としてはどんなリズムも示していないとみなすことができるが、粒子が寄り集まっていて、その塊が一つの大きな粒子のように回転しているなら、それは集団リズムが存在する状況に対応している。

粒子集団の重心の運動が集団の運動を代表しているので、重心と原点の距離Rが集団リズムの強さを表現している。円の半径を1とすると、Rは0~1の値を取る。


「平均場」という考え方(p.94)

個々のリズムが非常に多数のリズムの影響を平等に受けている場合は、一つのリズムが多数のリズムの影響下にあると同時に、一つのリズムが多数のリズムに影響をあたえている。こうした状況を理想化すると、各構成員が他のすべての構成員と同じ強さで結合するというモデルが考えられ、これを「平均場モデル」と呼ぶ。

平均場のモデルが適用できる集団では、平均場は個々の成員の動きを支配すると同時に、逆に成員の動きの全体が平均場を作り出しているという「個と場の相互フィードバック」が実現されている。このシステムでは、集団全体を巻き込む突然の秩序形成や秩序崩壊がしばしば起こる(転移現象)。

転移現象としての集団同期(p.98)

リズム間の結合力がある限界を超えると集団全体が歩調を揃えて突然大きなリズムを示し始める。その背景には「個と場の相互フィードバック」があり、そこにはプラスのフィードバックとマイナスのフィードバックが含まれている。プラスのフィードバックとは、場が揺れはじめると、そのこと自体がますます揺れを強めるように働く性質のことで、マイナスのフィードバックとは、メンバー間の結合力が弱いと、もともと違った自然のペースを持っていた個々の振動子がばらつきはじめ、場の揺れが静まっていく性質のこと。このように相反するフィードバック機構を内在させたシステムには、プラス傾向とマイナス傾向の相対的な優位性が逆転する臨界点が存在する。集団同期によって静かな集団状態から振動する集団状態に突如変化するこのような転移現象を「同期相転移」と呼ぶ。

理論生物学者のアーサー・T・ウィンフリは、自然現象における集団リズムの重要性を初めて主張した人で、集団リズムの発生を一種の相転移として捉え、位相モデルと平均場モデルを用いて集団リズムが生じるメカニズムを理論的に解明しようとして「作用力」と「感受性」の相乗効果を仮定した6)が、集団同期転移が存在することを数学的に証明するにはこのモデルでは不十分であった。

ウィンフリ論文の衝撃(p.102)

ウィンフリモデルの修正版として、振動子間の位相差の正弦関数を相互作用の形とする「蔵本モデル」を提案した(下記)。

\begin{align} \displaystyle \frac{ \mathrm{d} \theta_{i}}{ \mathrm{d} t} = \omega_{i} - \frac{K}{N} \sum^{N}_{j=1}\sin (\theta_{i} - \theta_{j}), \, i=1, 2, ..., N \end{align}

ここで、\(N\)は集団に含まれる振動子の総数、\(\theta_{i}\)は\(i\)番目の位相、\(\omega_{i}\)はこの振動子の自然周波数を表し、その値は正規分布からランダムに抽出される。\(K\)は振動子間の結合強度を表す。このモデルを使えば「個と場の相互フィードバック」の考え方を単純な数式で表すことができ、同期相転移の存在を理論的に示すことができる(下図)。

蔵本モデルのようにある単純化された理論モデルを検討することには次の2つのメリットがある。一つは、「こんな新しい現象がありうるのではないか」ということが示唆されれば、より現実に沿った複雑なモデルを通じて、この可能性を本格的に探ることができる。もう一つは、このようなモデルは一見全く違う物理的対象や状況に対して同じ形を持っているので、それを解析することで、今までそれそれ独立に研究されていた対象の間に思いがけない共通性が見いだされることがある。

振動子ネットワークとしての電力供給網(p.107)

ホタルの集団やコンサートホールの聴衆は、個々のメンバーがすべてと平等につながっているが、メンバーが複雑なつながりかたでネットワークを構成しているリズム集団があり、その一例が電力供給のネットワークである。

電力供給システムは、発電所、送電線、電力需要者(工場や家庭など)などが互いにつながった複雑で膨大なネットワークで、交流電流というリズム(その周波数は東日本では50Hz、西日本では60Hz)が行き交っている。

交流の周波数は同じネットワーク内ではどこでも同じでなければならず、完全に同期している必要がある。さもなければ、最悪の場合には大停電に至ることもある。

電力ネットワークは同期を求めている(p.111)

この節の話は分かりにくい。それは複雑な話を数式を用いず文章だけで説明しようとしているためだ。そこで、文献7)と8)を参考にしながら、この内容を数式を交えながら補ってみる。

電力系統に内在する\(N\)台の発電機のうち\(i\)番目の発電機の動揺方程式(同期回転機の運動方程式)は次式で表される7-8)

\begin{align} M_{i}\displaystyle \frac{ \mathrm{d^{2}} \theta_{i}}{ \mathrm{d} t^{2}} = P_{\mathrm{m},i} - E_{i}^{2}G_{ii} -D_{i}\frac{ \mathrm{d} \theta_{i}}{ \mathrm{d} t}-P_{\mathrm{e},i}, \, i\in\{1,...,N\} \end{align}

ここで、\(\theta_{i}\)は50Hzまたは60Hzの回転座標系からみた発電機の位相、\(M_{i}>0\)は発電機の慣性定数(発電機の回転を維持しようとする働きの係数)、\(P_{\mathrm{m},i}>0\)は機械的入力 (mechanical power input)、\(E_{i}>0\)は内部電圧、\(G_{ii}\)は発電機\(i\)のコンダクタンス(\(E_{i}^{2}G_{ii}\)は内部損失を表す)、\(D_{i}>0\)はダンピング定数、そして\(P_{\mathrm{e},i}\)は電気的出力 (active power output)を表す。

次に、発電機\(i,j\)間の縮約アドミタンスを\(Y_{ij}\)とすると、電気的出力は次のように表される。

\begin{align} \displaystyle P_{\mathrm{e},i}=-\sum_{j=1}^{N}E_{i}E_{j}\{G_{ij}\cos(\theta_{i}-\theta_{j})+B_{ij}\sin(\theta_{i}-\theta_{j})\} \end{align}

ここで、\(G_{ij},B_{ij}\)は、それぞれ発電機\(i,j\)間の相互コンダクタンスとサセプタンスである(すなわち\(Y_{ij}=G_{ij}+jB_{ij}\))。 これを動揺方程式に代入すると次式が得られる。

\begin{align} \displaystyle M_{i}\frac{ \mathrm{d^{2}} \theta_{i}}{ \mathrm{d} t^{2}} = -D_{i}\frac{ \mathrm{d} \theta_{i}}{ \mathrm{d} t}+\omega_{i}-\sum_{j=1}^{N}P_{ij}\sin(\theta_{i}-\theta_{j}+\varphi_{ij}) \end{align}

ここで、\(\omega_{i}:= P_{\mathrm{m},i}-E_{i}^{2}G_{ii}\)(有効機械的入力)は\(i\)番目の発電機の自然周波数で、\(P_{ij}:= E_{i}E_{j}|Y_{ij}|\)は発電機\(i,j\)間で流れる最大電力で、\(\varphi_{ij}:=\arctan(G_{ij}/B_{ij})\)は相互コンダクタンス\(G_{ij}\)によるエネルギー損失を表す。 慣性定数\(M_{i}\)がダンピング定数\(D_{i}\)に比べて非常に小さい場合(\(M_{i} \ll D_{i}\))、上式は次のようになる。

\begin{align} \displaystyle D_{i}\frac{ \mathrm{d} \theta_{i}}{ \mathrm{d} t} = \omega_{i}-\sum_{j=1}^{N}P_{ij}\sin(\theta_{i}-\theta_{j}+\varphi_{ij}) \end{align}

これは、「非均一蔵本モデル (non-uniform Kuramoto model)」と呼ばれ、「蔵本モデル」を以下の3点で拡張したモデルになっている。

  1. 角速度\(\dot{\theta_{i}}\)が\(D_{i}\)倍されている
  2. 相互作用の係数が\(P_{ij}\)になっており、結合が非一様で対称になっている
  3. \(\varphi_{ij}\)が位相差に加わっている

このように、電力ネットワークは蔵本モデルの拡張版である非均一蔵本モデルに帰着することができる。したがって、非均一蔵本モデルを利用して電力ネットワークシステムの同期現象を解析できる。

送電網のリスク(p.114)

人間社会を支える最大のインフラである電力供給網の根底に同期現象が潜んでいる。

REFERENCE

  1. mdepablo: Millennium Bridge. Youtube, https://www.youtube.com/watch?v=eAXVa__XWZ8
  2. Yozo Fujino et al.: Synchronization of human walking observed during lateral vibration of a congested pedestrian bridge. Earthquake engineering & structural dynamics, 22(9), pp.741-758, 1993.
  3. Z Neda et al.: The sound of many hands clapping. Nature, 403(6772), pp.849-50, 2000.
  4. John Buck and Elisabeth Buck: Mechanism of rhythmic synchronous flashing of fireflies. Science,159(3821), pp.1319-1327, 1968.
  5. Andrew Moiseff 1, Jonathan Copeland: Firefly Synchrony: A Behavioral Strategy to Minimize Visual Clutter. Science, 329(5988), p.181, 2010.
  6. A T Winfree: Biological rhythms and the behavior of populations of coupled oscillators. Journal of Theoretical Biology, 16(1), pp.15-42, 1967.
  7. 藤田 佑樹, 滑川 徹: 非均一蔵本モデルを用いた送電損失を含む電力ネットワークの同期条件. 制御理論シンポジウム資料, 40, pp.21-24, 2011.
  8. F. Dorfler, F. Bullo: Synchronization and Transient Stability in Power Networks and Non-Uniform Kuramoto Oscillators. arXiv:0910.5673, 2009, https://arxiv.org/abs/0910.5673.

2023年4月5日水曜日

大学院時代に研究していたことを退職してから勉強し直すということ

はじめに

私は大学院時代に非線形力学の研究をしていました。でも、当時(1970年代後半から1980年代初頭にかけて)はほとんど理解していませんでした。そこで、退職を機にもう一度勉強し直したいと思い、このブログを立ち上げました。このブログでは読んだ本や論文の概要や感想を書き留めていきたいと思います。

まず最初に読んだ本

まず最初に蔵本由紀先生の「同期する世界」から読み始めています。私は大学院(修士課程)のとき、大学は違うけれども蔵本先生の指導を受けていました。そこで、蔵本先生の著書を最初に読むべきと決め、この本を選びました。

模擬実験でオルガンのパイプを同期させる(P.41)

「リズムは同期を好む」という自然に潜む自己組織化の能力は新しい技術の原理として大きな可能性をもっているように思います。

音波が逆相に同期する現象を利用して騒音を打ち消す技術に言及している。この節で興味深かったのは、計測した音波のデータからこの現象を記述する運動方程式をコンピュータを使って決定する手法を使っているということ3)

ロウソクの炎も同期する(P.46)

ロウソクの炎は周期的に揺らぐことがある(Oscillatory Combustion of 3 candles (speed x0.15) - YouTube)。つまり、ロウソクの炎は振動子になる4)

燃料の供給→激しく燃焼→空気中の酸素の急激な消費→周辺の酸素の欠乏→燃焼の抑制→酸素が十分な量に達する→再び激しく燃焼→・・・

また、ロウソクの炎も同期する。2本のロウソクの間隔が近いと同相同期(Candles synchronized oscillations - YouTube)が、離れると逆相同期(Anti-phase Synchronization of Oscillating Candle Flame (speed x0.15) - YouTube)が出現する。

ロウソクの炎が相互作用するのは、燃焼で生じる熱がもう一つのロウソクに伝わるからです。

熱が伝わる手段には、熱伝導、熱対流、熱放射の3種類があるが、現在のところ、熱放射の効果だけを考慮に入れた数学モデルが提案されている。

コオロギのコーラス(p.51)

音の強弱が周期的に変動する場合も音は振動子になる。音の強弱のリズムは互いに同期できる。二匹以上のオスコオロギが寄り集まると鳴き声が同相同期する。唱和するには聴覚が働いている5)

逆相同期するカエルの発声(p.55)

二匹のカエルに発声をうながすと、それらは交互に鳴く、つまり鳴き声はほぼ逆相に同期する。
カエルの発生行動はコオロギのそれとは違い、グループで協力してメスを引き寄せようとするのではなく、オス一匹一匹が個別に自分の居場所をメスに知らせるように鳴く6)

カエルのフラストレーション(p.57)

物理用語としてのフラストレーションは、二者の間のもっとも安定した関係が三者以上になると実現できなくなるような状況を言う。この物理的概念をカエルの発声に適用した。
三匹のカエルを同時に鳴かせると、条件によって、棲み分けられた三重奏で鳴くパターンと、三匹のうち二匹が同相で鳴き、他の一匹がそれと逆相で鳴くパターンとがある。長時間観察すると、これらのパターンが時々切り替えられる。その理由は分かっていない。

体内時計の自然周期はどうしたらわかるか(p.64)

チャールズ・A・ツァイスラーらハーバード大のグループが1999年に行った実験によると、ヒトの体内時計の自然周期は平均値が24時間+11分で、個人差も被験者の95%が平均値から16分もずれていない7)

Reference

  1. M.ABEL and S.BERGWEILER:SYNCHRONIZATION OF HIGHER HARMONICS IN COUPLED ORGAN PIPES. International Journal of Bifurcation and Chaos l(17), No.10, pp.3483-3491, 2007.
  2. Jost Fischer, Steffen Bergweiler, Markus Abel; The Arnold-Tongue of Coupled Acoustic Oscillators. arXiv, 2013, https://arxiv.org/abs/1311.5797
  3. M.Abel, S.Bergweiler, R.Gerhard-Multhaupt: J.Acoust.Soc.Am. 119(4), pp.2467-75, 2006.
  4. Hiroyuki Kitahata et al.: Oscillation and Synchronization in the Combustion of Candles. The Journal of Physical Chemistry A, 113(29), pp 8164-8168, 2009.
  5. THOMAS J. WALKER: Acoustic Synchrony: Two Mechanisms in the Snowy Tree Cricket. SCIENCE,166(3907), pp.891-894, 1969.
  6. I.Aihara et al.: complex and transitive synchronization in a frustrated system of calling frogs. Physical Review E, 83(3 Pt 1):031913, 2011.
  7. CHARLES A. CZEISLER et al.: Stability, Precision, and Near-24-Hour Period of the Human Circadian Pacemaker. SCIENCE, 284(5423), pp.2177-2181, 1999.




同期する世界 第3章 生理現象と同期

集団リズムとしての心拍(p.120) 無数のミクロリズムの協調から一つのマクロリズムが生み出される一例として心臓の拍動がある。右心房の上部に洞結節と呼ばれる部分があり、ここに約一万個のペースメーカー細胞を含む集団がある。個々のペースメーカー細胞は自律的に収縮を繰り返しているが、細...